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2022.07.25
ハンドメイド作家NOTE
ハンドメイド作家NOTE Interview002 Nitkaさん
今回はクロス・ステッチで、独特な世界を作品に表現する刺繍作家のNitkaさんにインタビューしました。
Nitkaさんは現在、主に雑誌や書籍に作品や図案を発表したり、ご自身で直接図案の販売をされています。最近では、SNSによる活動がきっかけで、アメリカのミシガン州にある@riverviewstitchingで図案の販売が始まるなど、その活躍は日本だけにとどまることなくワールドワイドに広がっています。
Instagram・・・https://www.instagram.com/nitka.embroidery/
HP・・・https://www.nitka.work/
―クロス・ステッチを始めたきっかけを教えてください
けれども、大人になって子どもが産まれた後にもう一度始めてみたら、案外楽しくて子どもの時よりも上手くできるようになって、それからはまってしまいました(笑)
―刺繍作家として活動されるようになったのは、何か転機やきっかけがあったのでしょうか?
そんな時に、刺繍雑誌『ステッチイデー』の編集者の方から本のお仕事の声をかけていただきました。その時は「いい記念になるかな」と思って楽しく作らせてもらったんですが、その後もまた声をかけていただいて、嬉しいことに、気がついたら12年経ちました(笑)
『ステッチイデー』に載せていただくようになって、図案を多くの方にお届けする楽しさに気付き、今では「刺繍作家」という肩書きを使わせてもらっています。
―Nitkaさんを発見してくださった『ステッチイデー』のおかげで、こうして広く私たちもNitkaさんの作品を知ることができたんですね!私もこの雑誌の表紙の作品を見て「かわいい!」って思っていました。
―Nitkaさんが作風や作品に、影響を受けた人やものはありますか?
以前は東欧や北欧といった、伝統的で民族的なモチーフが多かったんです。けれども、だんだん自分の好みとのギャップが生じてきてしまって…。もっと違うテーマにも興味があるのに、これまでの作品を好きでいてくださる皆さんをがっかりさせたくなくて、そこで葛藤が生じて、一時は悩んでいました。
けれども、その時に、すごくカッコつけるみたいなんですけど、ピカソの話を思い出して。ピカソって、時代によって全く作風が変わりますよね。こんなにすごい人でも、こんなふうに変わるなら、自分も自分の好きなように、自然に素直に表現していいんじゃないかって思ったら、気持ちが軽くなりました。
私の作品を好きな方でも、同じものをずっと好きとは限らないし、むしろ好きなものは少しずつ変わっていくかもしれない。それなら、皆さんと同じように私も成長できたらいいな、私も一つの形にこだわらなくてもいいんじゃないかなって吹っ切れた瞬間、「ああ、自由だ」って気持ちになったんです。
―私も東欧の民族的な雰囲気のものが好きです。Nitkaさんがそうした制限を取り払っても、作品の中に、どことなく懐かしさと優しさと親しみやすさがあって、そうした雰囲気やエッセンスはしっかりと伝わってきます。自由に作ったとしてもNitkaさんらしさは失われていないです。素敵だなって思います。
―作品づくりのアイデアがひらめくのはどんな時ですか?
そうして一度全部頭の中をリセットして考えた時にアイデアが浮かんできて・・・そんなふうに作っています。
―情報を入れて、自分の中で噛み砕いて、まっさらな気持ちで作品に向かい合う感じでしょうか。何事も深く理解していないと、本物にはならないでしょうから、自分の仕事の上でもそうした作業はすごく大事だと思っています。
―よく「こびと」のモチーフを描かれているのが、とても印象的です。「こびと」には何か思い入れがあるのでしょうか?
「こびと」のデザインは日々の妄想です(笑)あそこにいそうとか、ここにいるかなとか…。カーテンが揺れたら、あそこに「こびと」がいるかも!とか。あと自分で物語を作って、その一場面をデザインしたりもします。
―楽しそうですね。いつでもどこでもその瞬間が作品になりそうな気がします。あちこちに「こびと」がいそうな気がします!
―デザイン作りで楽しいことはどんなことですか?
例えば、バイキングのモチーフでは、初めのころは盾と矛を入れていたんです。でも、何年か前から、盾だけにしています。自分を守るものは必要だけど、誰も傷つけたくないので、攻撃するものは入れたくないなと思って。
こんな風に、ちょこっとメッセージが入っています。隠してるので、分かりづらいんですけど。
「好き」とか「大切だよ」とか、言葉で伝えるにはちょっと照れくさいようなメッセージを入れたり、それからはっきりと発信してしまうと、その言葉通りにしか受け取ってもらえないことなんかを、やんわりと入れる事で何か感じてもらえるんじゃないかなぁと…。何か引っかかったところで、少し考えてもらえたらいいなあって思います。
―メッセージは受け取る人の自由。Nitkaさんの想いが100%伝わらなくても、なんとなく雰囲気や想いが伝わったらいいということですね。次からNitkaさんの隠しメッセージを探してみます。作品を見る楽しみが増えました!
―一方で、苦労することはありますか?
元々私の作品は、私が作った図案を使って、誰かが刺繍で作ってくださるものなので、その方の作る時の想いとか、背景とかがプラスされて完成される作品になるように、あまり詰め込みすぎないようにしています。
―足し算は簡単だけど、引き算はデザインでは加減が本当に難しいですね。引き算で生まれた余白にNitkaさんの優しさや作る人に対しての愛が詰まっているんですね!
―これからの夢や、目標をぜひ教えてください。
具体的な目標では、主張は控えめだけれども作品に目を向けると何か訴えかけてくれるものがある、面白い作品を作っていきたいなと思っています。
―刺繍の本質はそういう部分かもしれないですね。例えばシンプルな洋服にワンポイントの刺繍があることで、彩りが加えられて、なくてもいいかもしれないけれど、あると目が離せないもの。既にそうなっているとは思うのですが、そういうものを目指しながら少しずつ変化するNitkaさんの作品をずっと見ていたいと思います。
―オリムパスの刺繍糸についての意見をお聞かせください。
それと、目がだんだん見えにくいお年頃なんですけれど(笑)、オリムパスの糸は発色が良くて、光に左右されにくいので、同年代の方々でも、使いやすいんじゃないかなって思います。
太さもちょうど良いです。刺している時に隙間が空くことなく、きれいに刺すことができます。オリムパスの糸は、クロス・ステッチ布を埋めるのにちょうど使いやすい糸です。
―ありがとうございます。良い部分は残したまま、より良い糸を作っていきたいなと思います!
―最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
いつも応援してくださって、本当にありがとうございます。
クロス・ステッチは、とても簡単で、誰でもできるステッチですが、実はとても奥が深いです。少しでも興味があるという人がいたら、ぜひ一度チャレンジしてみてください!
時々「色を変えたり図案をちょっと変えたりしてごめんなさい」って言ってくださる方がいらっしゃいますが、私は全然構いません。さっきも言ったように、余白の部分こそ、作り手さんの想いをのせる部分だと思うので、むしろ嬉しいです。どんどんやってほしいです。
私の図案に関しては、気にせず、ぜひ皆さん自由にアレンジしてクロス・ステッチを楽しんでください!
ご自身の作風の変化を前向きに捉えられていることも、とても素敵だなと感じました。Nitkaさんの作品を見る人や図案をもとにステッチをする人たちの、それぞれの感性や個性を尊重してくれている点にも、Nitkaさんの刺繍に対する愛の深さを感じました。
これから先の作品もずっと楽しみに応援していきたいです。ありがとうございました。