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2022.09.25

ハンドメイド作家NOTE

今回は温かみがあり、刺し子愛あふれる作品を多数発表されている刺し子作家のsasicotte(サシコッテ)さんにインタビューしました。
刺し子作品の販売やワークショップ、書籍での作品掲載。
SNSでは古典柄からオリジナルの模様まで、様々な作品が公開されています。

インスタグラム…https://www.instagram.com/sasico_tte/
作品の販売・ワークショップのご案内…https://sasicotte.base.ec/
―刺し子を始めたきっかけを教えてください。
元々手芸が得意だった訳ではなかったんです。小学校の家庭科の時間にも刺繍の課題がなかなか出来なくて…。苦手意識があって、大人になるまであまり針を持つということはありませんでした。
そんな風だったのですが、刺し子に出会ったのが、ちょうど15〜16年前でしょうか。
冬にこたつに入って「のんびり何かできるものはないかなあ」と考えながら手芸屋さんに行った時に、刺し子のキットが並んでいたのを見たのがきっかけです。
こういうものがあるんだな、って新鮮で、点々で描かれているものを針で刺していけばいいだけだから、私にもできるかもしれないって(笑)。
最初に挑戦したのが、七宝つなぎと花刺しと青海波で、オリムパスさんのキットでした。早速買って挑戦してみたら、意外とサクサク進んで「これは意外とできるかも!」そんな感じで始めてみました。初めは本当に趣味程度で、一年のうちでも数枚しか作っていませんでした。
6年ほど前に大病をしまして、半年ぐらい治療をして、治療が終わっても体力がなかなか戻らなくて。そんな時に刺し子の糸と晒が家の中にあって、時間だけはあったのでリハビリを兼ねてまとめて作ろうかなと始めたのが今に繋がっています。

今は一年間に100枚以上お仕立てしています。
刺し子に出会った頃より今の方がキットや糸の種類が増えて、作る楽しみも増えましたね。
―刺し子作家を始めたきっかけはなんでしょうか。

自分では「刺し子作家」というよりも「刺し子を楽しんでいる人」と思っています。
Instagramを始めた2018年ごろに、ちょうど私の知っているセレクトショップのオーナーが「自分で販売してみたらいいんじゃない?」って言ってくださって。
小さなマルシェを開催されるときに出品する機会をいただいて、参加したのがきっかけです。皆さんに可愛いって言っていただいて。
その時は昔からある古典柄が中心でしたが、刺し子を初めて見るお客様が多くて、もっと皆さんに知っていただける機会を作ることができるかもしれないと思いました。

そこで、地元栃木で刺し子展をやってみたら、刺し子を好きな方がいらっしゃるようになり、それからありがたいことに毎年来てくださる方も増えてきました。
那須のまわりの高校では家庭科の時間に、刺し子の授業があるそうなんです。若い方の「懐かしい!」という言葉や、おばあちゃんがやっていたのを思い出すと懐かしんでいただいたり、世代を超えて刺し子とそれぞれの思い出がつながるということは、刺し子ふきん展をやる楽しみのひとつでもあります。
―「ろまんちっく刺し子」という名前や、作品ひとつひとつを紹介する文章にも統一された世界観というものを感じます。

―そのような世界観を作り出す上で、影響を受けた人や出来事はありますか?
ありがとうございます。
民藝の柳宗悦さんです。
現代のようにものがどんどん消費される時代では、使って飽きてしまったり、壊れて捨てて新しいものを買う…ということが多くなりましたが、昔は直して使ったり、つぎはぎして使ったりしていましたよね。モノを大切にするということ、普段使っているモノに美しさがあることを柳さんに気付かせてもらいました。
あとは、田中忠三郎さんという東北の方で民族学者です。
たまたま刺し子の展示をしている美術館に置いてあった本で見つけて、それがとても素晴らしかったんです。こぎん刺しや刺し子は、元々日本全国にあったんじゃないかなと思いますが、東北地方では文化として残っているように感じます。今よりももっと貧しい時代を知って、刺し子の糸を大切に、刺し子で使う晒もなるべく端切れが出ないように、小さいことかもしれませんがそういう心持ちを教えてもらったような気がします。
もう一人、料理研究家の辰巳芳子さん。料理は人間にとってはなくてはならないもの。衣食住で考えた時に、「衣」の部分が刺し子、料理が「食」で、人間が生きるために必要なものを生活の中にどのように落とし込んでいけるか日々考えています。

東北地方をはじめ全国には、その土地土地の刺し子の文様が残っていて、これからも伝統的な手順や方法を大切に残していただきたいなと思っています。
一方で私はそうした昔からのやり方を教わってみたかったのですが、教えていただける場所を探せなくて、結局誰にも教われずにいたので、私の刺し子は独学なんです。だからこそ私なりに丁寧に美しく、家の中にそれがあれば、少しウキウキするような刺し子ふきんを仕立ててゆけたらと思っています。昔から日本にある「刺し子」というものを知ってもらえるお手伝いを微力ながらできたらいいなと思います。
―どのような時に作品のアイデアが浮かぶのでしょうか。
毎日、山と田んぼの中をお散歩していると、いろいろなヒントが見つかります。稲穂が日々垂れていく感じや、雨あがりの草に水滴がたくさんついている様子…。そんな自然の風景や季節の移り変わりを刺し子の中に作れたらいいなと思っています。たぶん昔の人々もそうしていたんじゃないかと。
「ヒカリノシズク」という模様は、今年の春に玉ムスビを作品にする方とコラボをする機会があって、その方の手法を目の当たりにした時にかっこいいなと思い、雫の表現を玉ムスビで刺し子に取り入れて仕立てることができました。
こんなふうに、自由にあまり意識せず、ふとした瞬間に生まれることが多いですね。
―作品作りでの楽しみや、反対に苦労されていることはどんなことですか?

苦労は特になくて、全部が楽しみです。下準備から下書き、文様を刺す、お仕立て、すべてが楽しい。刺しながら、だんだんリズムに乗ってくると楽しくなって、もっと夢中になるっていう危険性があります(笑)。完成が見えてきたときに、この楽しい気持ちを終わらせたくなくて、あえて少しだけ残して翌日完成を楽しんだり。
何も考えないで、黙々と針を進めることは心のお楽しみでもあります。
私の場合、一枚の刺し子をずっと刺しているのではなく、4〜5枚の刺し子を並行して少しずつ進めていくというやり方をしています。「刺している途中のものを一晩寝かせると、布と糸が馴染んでくる」と、ある本で見つけて本当にそうだなって思いました。休ませることも大切なんですね。

苦労とは言葉が違いますが、刺し子は毎日刺していても作り終えるのに時間がかかるので、体に無理をさせないということに気をつけています。
できるだけ長く続けていきたいから、そこは、自分で気をつけていきたいところです。
皆さんも、無理はなさらないよう気をつけてくださいね。
―将来の夢について教えてください。
いつかsasicotteの本を作れたらうれしいです。そして、日本で刺し子ふきん展をやらせていただいてますが、いつかフランスで小さな刺し子ふきん展をやりたいです。「sasicotte」という名前は「刺し子」と「手」で、「sasicotte」なんです。響きがフランスっぽいですよね。
―いつかフランスの個展を見てみたいです!
では、オリムパスの素材についてお聞きしても良いでしょうか。sasicotteさんは10月に開催されるワークショップでも、オリムパスの刺し子糸を使われるそうですね。

はい。今回のワークショップではSashiko Thread 100mを使わせていただきます。
なかなかベージュ系の糸がなかったところSashiko Thread 100mでベージュを見つけたときはうれしかったです。Sashiko Thread 100mは今までにない色が多く発色もいい、特にベージュは白晒の時と色晒で、色味がベージュに見えたりグレーっぽく見えたりするのが綺麗で気に入っています。そして、長さが100メートルあるのもうれしいです。かせ糸は巻いてから使っているので、巻き応えはありますがたくさん使える良さがあります。

Sashiko Awai - iroは、名前の通り淡いパステルカラーが可愛くて、ポイント的にも作品に使えるなと思っています。
普段、細い糸の場合は絡みやすかったりするので初心者さんにはあまりお勧めしていないのですが、オリムパスさんの刺し子糸〈細〉はヨリがしっかりしていて絡みづらいので、初心者さんにもお勧めできます。そして綺麗な光沢感があり、季節や文様によって選べる糸が増えたのがいいですね。
オリムパスさんの刺し子糸はすごく肌触りが柔らかくて、運針していても手が疲れにくく、優しい刺し心地がうれしいです。

オリムパスさんの糸は作品にしてお客様に販売しても大丈夫という安心感があります。昔からの老舗の製絲会社ということで、安心して使わせていただいています。
一つだけわがままを言うと、Sashiko Thread 100mと刺し子糸〈細〉の間の糸が欲しいです!中間があると、組み合わせのバリエーションが増えていいと思いますので、ぜひお願いします。
―最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。
Instagramを中心に、完成した刺し子ふきんを投稿させていただいてます。ありがたいことに「いいね」やコメントを皆さんからいただいて皆さんと繋がっているのを感じています。Instagramではリアルに繋がることができなくても、刺し子ふきん展を開催することで、直接皆さんのお声がいただけるという両方の繋がりを、いつも楽しみにしています。機会がありましたら刺し子ふきん展にもぜひいらしていただけると嬉しいです。
刺し子は昔から日本にある手仕事のひとつです。その刺し子を楽しむ方が増えている中、日々の暮らしの中のちょっとしたお楽しみとしてsasicotteの作品をご覧いただけたなら幸いです。拙いお話を聞いてくださりありがとうございました。
一つ一つの質問にとても丁寧にご対応していただいたsasicotteさん。
刺し子本来の目的である「ものを大切に使う」という想いから生まれる温かみのある作品づくりや、「楽しいから刺し終わりたくない」という言葉どおり、強い刺し子愛が随所に感じる事ができたインタビューになりました。
そんな素敵な作品を刺されるsasicotteさんのご活躍をこれからも応援させていただきたいです。
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