縫針アイコン

News

2024.04.12

ハンドメイド作家NOTE

今回は、ニットクリエイターの藤田智子さんにお話を伺いました。
カラフルでキュート、愛らしく、どこか懐かしさを感じさせる個性的な編み物作品を数多く作られています。
ファッションアイテムはもちろん、食べ物の作品は本物以上にかわいくておいしそうです。
先生のSNSやHP、書籍などで目にしたことのある方も多いのではないでしょうか。

HP https://tmkknitroom.thebase.in/
Instagram https://www.instagram.com/tmkknitroom/
―まずは、手芸を始めたきっかけからお聞かせいただけますか。
私の祖母と母は、洋裁店を経営していたので、子供の頃からものづくりがとても身近にありました。例えば、地元の高校の合格発表があると、制服を作るため、採寸をしにたくさんの学生さんが親御さんと一緒にうちの洋裁店に来られます。そして、制服が完成間近になると、筒状に縫われた袖のパーツなどが、ずらっと何十枚も、壁にぶら下がっている光景を見てきました。「この不思議な形のパーツが袖になるんだな」と思ったり、1枚の布地から立体的な洋服ができるということについて、割と小さな頃から、当たり前のように理解していたという感覚はありました。
そんな環境ですので、手芸を始めたきっかけは、洋裁店で使わなくなった布やボタンをもらって、小さいポーチのようなものを作ったりしたことだったと思います。
―ご家族が洋裁をされるなかで、編み物はどのようなきっかけで始められたのですか。
編み物は母から習いました。子供の頃 初めて編んだマフラーは、どんどん目が減っていって、ピラミッドのような三角形のマフラーになってしまいました(笑)。
30年位前、女優さんがモデルをしている「◯◯が着るセーター」みたいな本があったと思うのですが、そういう本を参考にして、大学生の時にセーターを編みました。胸の辺りにバーンとハートの立体的な ポコポコがあって、とてもかわいいデザインだったんです。当時の彼氏に気持ちをアピールするためにそのセーターを編んで初デートに着て行きました。それが今の夫です(笑)。
結婚後は夫が転勤族でしたので、いろいろな場所に半年に1回くらい引っ越しをして、なかなか友達もできなかったので、その頃から家でできる編み物に没頭したという感じです。
最初は趣味としてセーターや小物を編んでいましたが、地元の編み物教室に通って本格的に機械編みと手編みの資格を取りたくなりました。
それと同時に2001年、当時はまだ珍しかった編み物のホームページを作ったんです。それが「tmkニットルーム」というホームページになるんですが、そこで、自分の作品を掲載して皆さんに見ていただくことで、同じ編み物をする人との繋がりが少しずつできるようになりました。
ホームページを見てくださった方から、教室や書籍掲載の依頼、通信販売会社様からのキット化などのお仕事につながって、今に至るという感じです。
―ホームページを作られたことが、作家になるきっかけとなったのですね。
先生はかなり初期の頃に編み物関係でホームページを作られた方のうちのおひとりだと思います。2001年開始ですと、2年後には25周年となるわけで、とても長く続いておられますね。
そうなんです。当時はまだホームページ仲間は10人程度しかいなくて、今でも長くやっていらっしゃる方はいるんですが、いつの間にかいなくなってしまわれたり…。寂しい思いをしました。
―編み物を通じたさまざまな人とのつながりがあったのですね。
では、そんななかで、影響を受けた人物や出来事がありましたら教えてください。
やはり洋裁師をしていた祖母ですね。祖母はとても品格と知性のあるお洋服作りをする人で、例えば戦前は芸能人の衣装や舞台衣装、歌手の衣装などを作っていたそうです。 当時はまだ着物の時代だったので、洋服というのは新しいジャンルでした。その祖母に私の物づくりのイマジネーションやクリエイティブな側面は、かなり影響を受けていると思います。今残っている祖母の作った洋服を見るたびに、「品格と知性のある作品は時代を超えてずっと廃れずに残るもの」だと思いました。そんな「オーラのある作品」を私も作りたいです。
―「舞台衣装」という言葉が出ましたけれど、先生の作品にもそのような雰囲気がありますね。
舞台に出た時にすぐにパッと目が行くような、人の目を惹きつけるところが似ていると感じました。
東京に祖母が時々仕入れに行っていたのですが、私も小さな頃から一緒に日暮里の繊維街などによく行きました。そこで「この色とこの色は合うんだよ」とか、 「こういう組み合わせにするとこう引き立つんだよ」とか、そういう何気ない色合わせのようなものなどを教えてもらったことも、かなり影響を受けてるんじゃないかなと思います。
―先生の作品は色合わせやモチーフがユニークなものも多いですが、作品のアイデアはどのような時に生まれてくるのでしょう。
私は手編みでも機械編みでも、特においしいもののモチーフをリアルにかつ、それを実用的に使える小物にするということが好きなので、おいしいものを見ている時はいつも「これはどんなふうな実用的な作品になるかな?」って考えています。最初は観察、それから試食で最後に制作、という感じですね(笑)。
―先生の作品の食べ物シリーズがもうかわいくてかわいくて!拝見していて、「どのようにアイデアが浮かぶのだろう」とずっと思っていたのですが、やっぱり「おいしそう」というところから入られるんですね。
そうなんですよ。そしておいしいものを見ている時、人は大体笑顔になるのがいいですよね。
―先生の作品はユニークで個性あふれる作品だと思うのですが、一方で、「おいしい」ことって、みんなが好きなことで普遍的なので、だからこそ誰もが笑顔になるような雰囲気があって、幅広く受け入れられるような作品になっているんじゃないかなと思います。
私は展示会では、作品を見ている人をこっそり「笑ってる、笑ってる、喜んでる」と思いながら見守っています。
―そういった人々を笑顔にするような作品を作られている中での楽しみや、反対に苦労をされている点を教えてください。
編み物の魅力は、元は本当に「たった1本の毛糸」だというところにあると思います。
その1本の毛糸に、道具を使って、自分の手を動かして、ちょっとアイデアを加えることで、自由自在な立体になる。その表現が本当に魔法みたいだなといつも思っています。編み物をしている時間そのものが喜び、みたいなところはありますね。
反対に苦労している 点といえば、あみぐるみもかわいいんですけれど、どうにか実用的にしたいと思う点ですね。
例えば、取り上げるテーマ やモチーフのデザイン性と、実際に「実用化」できるかどうかという点。その両立にはいつも苦労しています。
 
―実用的な小物にしたいというお話ですけれど、エミーグランデを使用して、ケーキがエコバッグに変化するという、とても面白い作品を作っていただきました。
―見た目のかわいさに実用的な仕様を加えられているのが本当に素敵だなと思っていましたが、やはりそこで苦労されているのですね。
でも、あまり苦労しているようには見せないようにやってます(笑)。
−次に将来の夢がありましたら教えてください。
夢という感じではないのかもしれないですけれども、「編み物は自由なんだよ」ということを、たくさんの人に伝えていけたらな、と思います。
正しい編み方というのはひとつではないですし、私の作風からもお分かりいただけるように、結局、何を表現してもいい。自由に、とにかく楽しんで作っていただきたい、というようなことを伝えたいです。
―先生のように自由に編み物の世界を突破していってくださる方が編み物業界におられることは、すごく心強いものがあります。
なんでも「基礎」というのは、一番綺麗に合理的に作るための技法ではあるとは思いますけれど、youtubeなどを見ると、針の持ち方ひとつでも結構いろいろな持ち方をされてる方がいらっしゃいますよね。
結局は形になればいいんじゃないかな。それで楽しいのならそれでいいんじゃないかな、と私は思っています。そんなところから、編み物を楽しむ人が増えたらいいなと思っています。
―そうですね。「楽しい」を入り口として、裾野を広げていきたいですね。
では、オリムパスの素材についての印象などありましたら教えてください。
オリムパスさんの素材に初めて触れたのは、エミーグランデを使った本のお仕事でした。
冊数でいうと、50冊以上でエミーグランデを使わせていただいています。とにかく発色が良くて、なめらかで、編んでいて疲れない。そして色数が豊富なので、私が表現したい食べ物の色の表現が無限にできるので、本当に大好きです。
エミーグランデのシリーズではカラーズも好きです。これからもたくさん使っていくと思います!
とくに、編んでいて疲れないのがいいです。編みやすくて疲れないというのは素晴らしいと思います。他の糸を使っていても、やっぱり最後はエミーグランデに戻るんですよね。
―発色がいいと言っていただけると本当に嬉しいです。ありがとうございます!編んでいて疲れないのは糸のすべりのよさによるものと思います。これからもご愛用いただけましたら嬉しいです。
では、 最後にご覧の皆様へメッセージをお願いします!
tmkニットルームでは、80点以上もの実用的でオリジナルな作品の編み図が販売されているので、ぜひ覗いていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
編み物初心者の方は、特に初めは真似からスタートすることになると思いますが、真似から始まったとしても、「もうちょっと自分はこうしたいな」「ちょっとここ色を変えてみようかな」という、ちょっとしたアレンジを加えることで、オリジナルな作品を編む第一歩になります。
そのようなオリジナルを作る楽しさをぜひ楽しんでいただきたいなと思います。
色鮮やかなピンク色の素敵なポンチョを纏ってあらわれた藤田智子さん。
そのポンチョは手軽に鹿の子編みだけで作ることができて、さらには残り糸だけで制作したのだそうです。そうしたことを楽しそうに気さくに語ってくださる明るいお人柄や、わずかに残る余り毛糸にも愛情を注がれる姿勢がとても素敵でした。
また、その時に語られた「編み物は編んでいる時間の記憶も一緒に編み込んでいる」という言葉もとても印象的でした。
これからのますますのご活躍を楽しみにしています!
関連商品

エミーグランデ<カラーズ>

エミーグランデ<カラーズ>はこちら

エミーグランデシリーズ

エミーグランデシリーズはこちら

『エミーグランデで編む かわいいレース編み』(日本ヴォーグ社 刊)

『エミーグランデで編む かわいいレース編み』はこちら